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【書評】藤子・F・不二夫のSFに対する強い関心が伺える、SF短編集①『創成日記』

どうも、こんにちは! ラガーです。

シリーズ42作目となる『映画ドラえもん のび太と空の理想郷ユートピア』が、2023年3月に公開されることが決定いたしました!

doraeiga.com

 

映画の内容はまだ公開されていませんが、HPに「2023年春、大空を舞台に繰り広げられるS(すこし)・F(ふしぎ)な大冒険にご期待ください!」と記載があるとおり、SF色が豊かな内容となることが伺えます。

 

映画ドラえもんは、SF色(タイムトラベルやパラレルワールドなど)が強い作品が多く、子供も大人も楽しめる内容です。原作の藤子・F・不二夫 先生は、SFに対する関心が強いことでも有名で、その原点というべき作品が、本記事で紹介する「SF短編集① 創成日記」です。

 

目次

あらすじ

マイ・シェルター

マイホーム建設という大望を抱くとあるサラリーマン風の男、いつもお酒は「お銚子1本まで」と決めている。

ある居酒屋で居合わせたちょびヒゲの男と談話しているところ、男が購入した立川の土地は、都心に5メガトンの核爆弾が落ちた場合、一時火災は免れても熱線で発火し、焼けてしまう、と宣告される。笑う男に対してヒゲの男は「現実認識が甘い」と一喝、ヒゲの男は「楽しい未来のための核シェルター 箱船」のパンフレットを男に渡し、二、三日後に御返事を聞きにきます、というところから物語は始まる。

果たして、男は核シェルターを購入するのだろうか?、またヒゲの男は一体何物なのだろうか・・・。

創世日記

主人公、加美創(かみ・つくる)は、高校受験を控えた中学三年生。七月のある夜、彼が未来から来たセールスマン風の男と出会うところから、物語は始まる。

ぼやく男の話を聞く内、彼は成り行きで、奇妙な円盤状の物体を託される。それは「天地創造システム」と呼ばれ、一つの宇宙を中に納めているのだという。その宇宙を育てるエネルギーは、彼自身の「意志」なのだという。男は創に、地球の誕生・生命の誕生・人類の誕生を成し遂げ、それに至るまでの観察日記をつけて欲しいと申し出る。

奇妙に思いながらも説明書に従い、その宇宙を育て始める創。その後もたびたび訪れる、あのセールスマン風の男。地球の誕生・生命の誕生までは上手くいった。あの男から大げさすぎるほどの賞賛を浴びせられた彼は、次第にその「育成」に夢中になっていく。

ところが、受験にさしつかえると不安になった両親が、「天地創造システム」を捨ててしまう。そこへ訪れたあの男から、創は意外な真相を聞かされる。彼が作っていたのは、実は今我々自身が住んでいる、この宇宙なのだという。生命の誕生を偶然に頼っていては、宇宙の終わりまでかかっても見込みが無いがゆえに、誰かが作らねばならないのだという。

天地創造システムに早くもう一度彼の意志を吹き込まないと、地球と人類が、丸ごと消えてしまうというのだが・・・。

いけにえ

浪人学生の池仁平(いけにへい)は、都会のど真ん中に浮いている大きな宇宙船を眺めている。だが、昨年の暮れから何の行動も起こさない宇宙船に対して、恋人のミキをはじめ、街の人々は無関心である。すると当然、黒いスーツを着た男2人に拉致されそうになる。車がエンストを起こし、間一髪のところで、難を逃れた。池がミキと別れ、アパートに戻ると、部屋に新聞記者を名乗る男が隠れていた。新聞記者の男は、UFOに関する特ダネをもっており、さらにUFOが「ある人を差し出せば、おとなしく立ち去る」と政府に交渉してきているというのだ。しかも、「ある人」とは池仁平のことだと。

新聞記者の男は、自身のスクープのために池を匿うのだが、謎の事故により水死してしまう。そこに政府の関係者と思われる人物と黒いスーツを着た屈強な男達が待っていた。男達は、あの手・この手で池を説得しようとするが、池は荒れまくる。

果たして、池の運命は、また、宇宙人の目的とは・・・。

街がいた!!

世界が人口問題の危機に!地球上の居住可能地域は開発され尽くした。あとは、山と砂漠と森林しか残されていない。山をくずし海底を掘り平地を増やして街を作る、国際的規模の大事業「ローラー・プロジェクト」

とある山中に研究所を中心とした一つの街が構築されているという。研究者風の男と少年と少女が車で研究所を訪れた。通りすがりにちょっと見学・・・といってもさせてくれる訳がないと、あきらめて帰路につく途中、ガス欠を起こしてしまう。研究者風の男はガソリンを得るため、少年と少女を置いて助けを求めに行ってしまった。残された少年・少女は、興味本位からか、街へ入って行く。険しい山中を抜けると、そこには広大で近代的な街が存在したのだ。

しかし、街には誰もおらず、うなり声とも云えぬ不吉な音が鳴っている、まるで生き物のようだ。一体この街は何の目的で作られたのか・・・。

老年期の終り

地球から五千光年離れ、銀河系の中心近くに位置する星ラグラング。歴史が始まって五千年が過ぎたこの星は、都市の大半が無人となり、わずかな住民が残るだけとなっていた。そんな中、五千年間一度も鳴らなかった警報装置が鳴り響いた。この警報装置は船籍不明のロケットが上空に侵入すると発生するというもので、着陸したロケットの内部には人工冬眠状態の少年がただ1人寝ていた。

医者のタマゴであるマリモの治療により意識を取り戻した少年は、六千年前に古代の地球から異星の文明と出会うための旅に出たイケダという宇宙飛行士で、総督と面会を果たし地球代表としての友好の意を伝える。だが、そこで総督は衝撃的な事実を告げる。ラグランクは恒星間航路の拠点としての役目を終え、明日にも無人の星と化すどころか、なんとイケダを含む最後の住民は「ワープ航法」で60日後には地球に戻るのだ。家族や恋人をも捨てた六千年間が無駄となったことに、イケダは絶望して気絶してしまう。

再び意識を戻し、女友達が歌う唄に聴き入るイケダに、マリモの祖父ゲヒラはラグラングの歴史と人類の現状を語りだす。ラグラングが星としての一生を終えようとしているのと同時に、極度の出生率低下や宇宙各地からの撤退などが進み、人類という種族そのものが老年期を迎えて衰退しつつあるという。人類の退行に反論するイケダとイケダの身を案じるマリモが取った行動は・・・。

うちの石炭紀

受験を控える真奈古親志(まなこちかし)は、両親がヨーロッパ旅行のため、二十日間一人で生活することとなった。開けっぱなしの冷蔵庫からケーキを取り出し食べていると、一匹のゴキブリが!しかも、二足歩行しているように見えた。

その後も、ちかしの周りに執拗に取り巻き、勉強の邪魔をする。というより一緒に勉強しているようにも見える。夜中に冷蔵庫を開けようとしている多数のゴキブリ達のうち、コップに嵌まった一匹を捕まえたちかしは、このゴキブリを飼ってみることにした。ゴキブリはみるみる早さで言語を修得し、家中の本や図鑑を読破してしまう。しばらくすると家での立場は逆転し、ちかしは紐で床に括られ、台所はゴキブリに占領されてしまう。その後も、ゴキブリの進化は止まらない、日本は世界はどうなるのか・・・。

みどりの守り神

深見みどりは、沖縄行きの飛行機に父と母の3人で家族旅行のため搭乗していたが、彼女らを乗せた飛行機は事故を起こして高山に墜落してしまう。運良く助かり、目を覚ましたみどりが目にしたのは一面の密林だった。同じ飛行機に乗り合わせていた学生の坂口五郎と共に助けを求め、二人は歩き始めるが、おかしな事に行けども行けども密林は続く。ようやく人家を見つけるも人気はなく、それどころか動物の気配すらしない。この異常な事態に、坂口は「世界的な核戦争が起こり、全ての動物は中性子爆弾によって死滅したのではないか」という恐ろしい推測を口にする。

旅を続けるうちに、空腹で堪らなくなると見たこともない美味な木の実のなる場所にたどり着いたり、長時間の歩行で傷んだ足が一晩で癒えたり、川で溺れて意識を失うと川岸のツタに絡まった状態で目を覚ますなどといった奇妙なことが続く。

やがて2人は密林の中に巨大なビルがそびえる地に辿りつく。そこは緑に覆われ変わり果てた東京であった。そこに残されていた新聞を見つけた2人は、その内容から、極めて強力な細菌兵器の漏洩により、人間を含めた生き物が残らず滅亡したという恐るべき世界の現状を知る事となる。2人の運命は・・・。

著者のプロフィール

ja.wikipedia.org

所感

個人的に、面白いと思った作品と感想をあげてみます。

 

・創世日記

観察していた世界が偶然の産物では無く、必然的に生まれたきたものであるということに気づかされた。ヒネりの効いたラストにホンワリとしてしまう。

また、タイトルからもわかるとおり、映画ドラえもんドラえもん のび太の創世日記」は、テーマこそ異なるが本作をベースにしているといわれています。

 

・うちの石炭紀

ゴキブリを知的生命体として急激に進化させる展開に驚く。

また、映画ドラえもんドラえもん のび太とブリキの迷宮」も、ゴキブリとブリキのおもちゃという違えはあれど、知的生命と思われていない小さな存在が、人類を恐怖に陥れるという構図は、共通点があると思う。

 

みどりの守り神

細菌兵器で地球が滅びかけるという展開は、まさに今、コロナという細菌により、地球がなりかけた状態ではないか。もし本当にコロナにより地球の生命が滅亡してしまったとしたら、人類が生き残るすべは、この物語で描かれるている世界ではないかと、「はっ!」と思ってしまった。

まとめ

短編集なので空いた時間に一話ずつ読むことができ、お勧めです。内容的にも「おやっ!」と不思議な気持ちになる作品や、「あっー!」と驚いてしまう作品があり、読み応えあります。また、映画ドラえもんのベースとなっている作品ではないだろうか?と考えながら読むのも、面白いですね。

最後までお読みいただたき、感謝いたします🤗